<スポーツ咬合>
歯の噛み合わせが全身の健康と密接に関わっているという事は、皆様もご存知と思いますが、どのようなメカニズムがあるでしょうか。
歯には、物を噛む、発音を助けるという機能以外に『全身を支える』という最も重要な機能がある。この全身を支えるという機能がスポーツパフォーマンスに大きく関係しています。
噛み合わせは全身の筋肉や骨格に甚大な影響を与えます。噛み合わせが悪いと、まず筋肉に影響が及びます。おかしな噛み方を長期間続けていると、顎のまわりの筋肉に無理な力がかかり、疲労感や痛みが生じます。すると、これらの筋肉とつながっている首すじの骨や筋肉にも影響が及び、首はもちろん、腕や肩、背中にも痛みが広がっています。顎の骨は全身の骨と繋がっているので、顎の骨や顎関節がゆがんでくれば、そのズレは脊柱から骨盤さらには全身の歪みへとつながるわけです。このゆがみが、手足のしびれ、腰痛、膝痛、股関節痛などの原因となります。わずか、一本の歯の数ミクロンのズレが、背骨を歪ませてスポーツ選手が実力を発揮できないこともあります。
実際アメリカの大リーグでは、噛み合わせを調整する事が契約条件に入っているほど、噛み合わせは重要なことです。ヤンキースに入団した松井選手が歯を治療させられたことは記憶に新しいことでしょう。しかし、日本ではスポーツにおけるその重要性がまだまだ浸透してません。
スポーツパフォーマンス向上の目的で噛み合わせ治療を積極的に取り入れる事により、スランプを脱出したり、成績が向上できたケースを紹介します。
箱根駅伝の常連である山梨学院大学は、平成4年の初優勝以来3年連続優勝という実績をもっていましたが、その後順位を下げ、昨年まで3年連続9位とシード権確保がやっとの状態でした。低迷期を脱する為の起爆剤として選手に噛み合わせの治療をする事により、昨年の出雲駅伝で優勝、全日本駅伝で準優勝、そして本年の箱根駅伝準優勝(往路は新記録で優勝)という好成績をおさめました。
また、過去3年の優勝時にも噛み合わせの治療を行っていたことは一部の関係者を除いてあまり知られていない事ですが、好成績と噛み合わせの治療をした期間との一致を考えると、噛み合わせがスポーツパフォーマンスの向上に非常に重大な影響を及ぼしている事が考えられます。
また、ある実業団の選手は2年前から腰痛に悩まされ、整形や針灸などありとあらゆる治療をほどこしたが痛みは治らず、自己ベストタイムから90秒遅れる状態にありましたが、かみ合わせの治療をわずか3回受けただけで、治療前に比べ5000mのタイムで約60秒も短縮し、腰痛もかなり軽減しました。
では具体的な治療法ですが、噛み合わせの治療としてスポーツ選手によく知られているものにマウスピース(スプリント)があります。マウスピースを装着する事により、様々な全身の状態が改善されることもありますが、人それぞれ体型や顔貌が違うように、噛み合わせも千差万別です。ですから、全ての人がマウスピースを装着することによりスポーツパフォーマンスの向上がみられるものでもありません。かえって身体へ悪影響を及ぼす場合もあります。また、1本の歯を数ミクロン削っただけで、骨盤にズレが生じる場合もあります。
最近の研究で、歯の詰め物やかぶせる金属の種類によっても、体の柔軟性、平衡感覚などにも多大な影響が及ぶ事がわかってきています。
全身への影響を考えた噛み合わせの調整は、最新の技術である為、まだまだ実施している歯科医院が少ないのが現状ですが、専門医を尋ね全身の状態と噛み合わせをチェックしてもらうことにより、充実した練習と、実り豊かな競技生活を手にする事が期待できます。
何年か前に「芸能人は歯が命」という言葉が流行しましたが、『ランナーも歯が命』なのです。
<寝たきりの老人が立つ>
■寝たきり老人が立ち上がる事実
「寝たきり老人が立ち上がった!!」いわゆる老人ホームでベットで寝たきりの老人が体にあった適正な入れ歯を装着することにより、立ち上がって歩くビデオが、歯科界で話題になり、国会でも国民の健康と大幅な保険料の減少が期待されるとして、取り上げられました。このビデオを撮った藤井佳朗博士の論文によると、5人に1人は立ち上がって歩くことができるようになるのです。最後まで自分の足で・・・と、みんな思っているのではないでしょうか?
完全な寝たきりで明日死んでもおかしくないと言われていたのですが、寝たきりになってから、ずっとはずしていた義歯を体に合わせて調整すると、回復し元気になりました。右の写真はカメラにむかって文句いうほど元気がでた様子です。 このおばあちゃんは、数年前に亡くなられましたが、亡くなる2日前まで非常に元気だったそうです。
これは、ある老人病院での七夕の短冊です。みなさん切実に元気になりたいと願っておられるのがわかります。
<顎関節症>
顎関節症は、ほとんどの病院でプレートによる治療が行われています。しかし、何ミリの厚さのプレートを入れればよいのか、大学病院でもわからない状態で、治療がまだ確立していないのです。口が開きにくい、耳の付け根が痛い、顎がカクカクなるなど色々な症状がありますが、全身を見て治療すると、このような症状がでている人に肩こり、腰痛、背中の痛みなどを伴っている人が多いのです。つまり、顎と腰という体の中心となる骨の歪みから様々な症状の一つという考え方をして、全身を診る必要があるのです。
顎関節症はまさに西洋医学が発達し医療が細分化された為に難治性な疾患としてあつかわれている病気ではないでしょうか?
■歯列矯正による姿勢改善例
体がかなり歪んでいたのですが、矯正により、歯並びを改善する事で姿勢もよくなりました。